―心配、してたんです。
憂える表情で言う彼女の様子が絶えず繰り返される。
僕はいつも君には意地悪ばかり言っていたから、君は僕の事なんか好きではないと思っていたから、
でも、君はみんなの心配をする人でしたね。
よく考えてみれば、
彼女の細い腕に巻かれた白い包帯が日に日に増えていくのを見れば分かること・・だったんですがね。
「――君ほどじゃないので・・僕は平気ですよ。」
戦の前には無かったはずの真新しい包帯。雑に結んであって、血が滲んでいた。そんな気丈な彼女の背後には青い顔をした朔殿がいた。
戦場で彼女と離れたのはほんの一瞬、なのにその一瞬に彼女は無理をしたらしい。
見受けるところ、かすり傷みたいですから未だいいけれど・・死なれたら困りますからね。
しかも人をかばって死ぬなんて・・褒められたものじゃありませんよ?
一瞥をすると、彼女は怯んだように言い訳をし始めた。
「ご、ごめんなさい・・・・・でも、私のほうが朔より丈夫だから・・ほら・」
しどろもどろで彼女は言う、僕はよっぽど冷たい眼をしているのか、
「逃げればいいじゃないですか、そうすれば君は傷つかないで済むんじゃありませんか?」
「〜・・・・・・・・。」
「来てください、治療します。」
陣の中へと引っ張っていけば、思ったよりその腕が細いのだと感じる。
陣の中は明かりがほんのりと付いていて外よりは格段に暖かい。
「外してくださいね、包帯。怪我はそれだけですか?」
小さな椅子に彼女を座らせて、薬箱をあける。
薬のにおいが広がる。
彼女はそれに顔を少し顰めて、そして上目遣い気味に見た。何か言いたげな瞳で僕を見る。
憂いのあるその表情に。
「どうしました?」
「弁慶さん、怪我平気ですか?」
望美さんが僕の手を掴む、僕が望美さんの手をつかんだ反対の手。
「―――――っ。」
矢が掠めたその腕を望美さんはつかむ、痛みで思わず顔を顰めた僕を望美さんは見逃さなかった。
けれどそんな傷も彼女の腕の傷に比べれば軽いもの。
「何故なんですか?君は何故自分の心配をしないんですか?」
あくまでも神子を心配する八葉として在ろうとしていた。
しかし、そうするにつれて自分の姿が浮き彫りになってしまっていく気がして。
僕は自然と彼女にも冷たい表情を見せるようになっていた。
「ごめんなさい・・・・でも、私は神子だから、そのための私だから・・・・・」
「傷つくのは、私だけでいいです。」
その彼女の一言で、僕は気がついたんです。彼女と考え方がとても似ていることに。
いつもの作り笑いを浮かべようとした・・・・・・・・・
「嫌いです・・・・・・・その顔の弁慶さん。」
泣いていた、
涙はほろほろと流れて、着物に墜ちる。赤く染まった血液と混ざり合う。
「笑いを作っても、私にはわかります。」
ぽとり、大粒の涙が僕の手に落ちる。
手だけではない・・・・・・心にも墜ちたのかも知れません。
「弁慶・・・さん?」
「どうしたんですか・・・?」
目頭が熱くなって・・・何かが落ちる。
「・・・・・・・・・治療、しないと・・・・・・・・・望美さん」
「平気です。まずは・・・・・あなたから。」
目の前でふわりと笑う。
彼女はまるで蝶のよう。
涙は流れる・・・・・・・・とめどなく。
Fin
憂える表情で言う彼女の様子が絶えず繰り返される。
僕はいつも君には意地悪ばかり言っていたから、君は僕の事なんか好きではないと思っていたから、
でも、君はみんなの心配をする人でしたね。
よく考えてみれば、
彼女の細い腕に巻かれた白い包帯が日に日に増えていくのを見れば分かること・・だったんですがね。
「――君ほどじゃないので・・僕は平気ですよ。」
戦の前には無かったはずの真新しい包帯。雑に結んであって、血が滲んでいた。そんな気丈な彼女の背後には青い顔をした朔殿がいた。
戦場で彼女と離れたのはほんの一瞬、なのにその一瞬に彼女は無理をしたらしい。
見受けるところ、かすり傷みたいですから未だいいけれど・・死なれたら困りますからね。
しかも人をかばって死ぬなんて・・褒められたものじゃありませんよ?
一瞥をすると、彼女は怯んだように言い訳をし始めた。
「ご、ごめんなさい・・・・・でも、私のほうが朔より丈夫だから・・ほら・」
しどろもどろで彼女は言う、僕はよっぽど冷たい眼をしているのか、
「逃げればいいじゃないですか、そうすれば君は傷つかないで済むんじゃありませんか?」
「〜・・・・・・・・。」
「来てください、治療します。」
陣の中へと引っ張っていけば、思ったよりその腕が細いのだと感じる。
陣の中は明かりがほんのりと付いていて外よりは格段に暖かい。
「外してくださいね、包帯。怪我はそれだけですか?」
小さな椅子に彼女を座らせて、薬箱をあける。
薬のにおいが広がる。
彼女はそれに顔を少し顰めて、そして上目遣い気味に見た。何か言いたげな瞳で僕を見る。
憂いのあるその表情に。
「どうしました?」
「弁慶さん、怪我平気ですか?」
望美さんが僕の手を掴む、僕が望美さんの手をつかんだ反対の手。
「―――――っ。」
矢が掠めたその腕を望美さんはつかむ、痛みで思わず顔を顰めた僕を望美さんは見逃さなかった。
けれどそんな傷も彼女の腕の傷に比べれば軽いもの。
「何故なんですか?君は何故自分の心配をしないんですか?」
あくまでも神子を心配する八葉として在ろうとしていた。
しかし、そうするにつれて自分の姿が浮き彫りになってしまっていく気がして。
僕は自然と彼女にも冷たい表情を見せるようになっていた。
「ごめんなさい・・・・でも、私は神子だから、そのための私だから・・・・・」
「傷つくのは、私だけでいいです。」
その彼女の一言で、僕は気がついたんです。彼女と考え方がとても似ていることに。
いつもの作り笑いを浮かべようとした・・・・・・・・・
「嫌いです・・・・・・・その顔の弁慶さん。」
泣いていた、
涙はほろほろと流れて、着物に墜ちる。赤く染まった血液と混ざり合う。
「笑いを作っても、私にはわかります。」
ぽとり、大粒の涙が僕の手に落ちる。
手だけではない・・・・・・心にも墜ちたのかも知れません。
「弁慶・・・さん?」
「どうしたんですか・・・?」
目頭が熱くなって・・・何かが落ちる。
「・・・・・・・・・治療、しないと・・・・・・・・・望美さん」
「平気です。まずは・・・・・あなたから。」
目の前でふわりと笑う。
彼女はまるで蝶のよう。
涙は流れる・・・・・・・・とめどなく。
Fin
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