―冷たい人、それが私が彼に抱いた第一印象。
自分がある人、そして次の思ったのはそれ。
秋の平泉はとても綺麗で、華やいでいて・・私は時折その景色に見とれ、立ち止まって眺めることも多々。
一人歩きは危険だと九郎さんや譲君に言われながらも・・止められなくて。私はこっそり奥州平泉の秋を満喫していた。

ある日の事。
私はいつも通りにふらり高館を出ると、見えた黒い姿。
手に持っている得物はどうやら太刀。
普段は八葉の皆と一緒で見る機会も少ないのでこの機会に・・・・・観察させていただくことにした。
そぉっとかくれて物思う。
――いつもは、陰陽の術を使うんだよね。
太刀って事は・・剣の稽古かな?

九郎さん曰く、昔の泰衡さん別段暗くも無く、冷たいわけではなかったそうだ。
ただちょっと無器用だったみたいだけれども・・それは九郎さんも一緒だと思うし・・私が思うところ、秀衡さんの愛情(笑)を九郎さんに取られて・・って言う感じはどうかなーと思っているところ。

冷たいところしか知らない私には想像する事しか出来ない。私は彼が気になっている。ならば、探求(?)するしかないだろう、ぁぁ私の単純な脳みそ。

・・ぇ?
ちょっと待って、こっち見てる・・・。
近付いてきちゃった・・
・・つまり、ばれたんだよね。

「神子殿、何用だ?」

冷たい瞳・・そう映る。冷たいけれど何だか凛とした感じで冷たくなりきれない瞳。
優しい風は吹く、私の髪の毛を弄んで、かぜに声をとられないように私は言う。

「・・暇、だったんです。これから稽古ですか?」

「・・そうだが、」

眉間にしわが寄る。詮索されるのが嫌いらしい。
でもそんな彼の気持ちも、私の好奇心には勝てない。

「・・・・・見せてもらっていいですか?」

悪戯っぽく、でも相手にイヤとは言わせないような強い口調で、眼で語るんですよ。

「そんな物見て楽しいのか・・・・?」

ますます深いしわが眉間に刻まれて、その嫌そうな声で私を押す。押されはしない。私はね・・
あくまで心の中だけで私は笑う。

「ぇぇ、とっても。」

あ、なんか誰かの口調とかぶった気がする・・でもいいや。
私は知ってる。彼が私を軽くあしらえないこと。

「好きにするがいい。」

いつもの捨て台詞をはいて彼は私に背中を向ける。

「ありがとうございます」

その背中に、こっそりと感謝の言葉を述べておいた。

草がいい感じに生えている地面に座り込んで、私は自分の前方で始まった稽古を見る。
稽古、はいつも自分がしてばかりで、人のを見ることなんて珍しかったから。
つい夢中になってしまう。
稽古と言えども皆真剣そのもの、声が上がり、剣の交わる音が響く。その中には銀も混ざっていたりして当分見飽きることはなさそうだ。

大勢の人が剣を振るう中で、泰衡さんは手に持った太刀をもって只立っているだけのように見えた。
・・ん?違う、手合わせをしている・・なのになんであんなに自然体なんだろう。
ある意味変、周りと浮いている。油断だらけに見える・・・・・・
けれど来る刃を全て交わし、更に攻撃までしているところを見ると・・・う〜ん・・。

「すごいな。」

「・・昔からだ。」

いつの間にか背後に立たれていたのか・・いつもなら気がつくのにな。
戦が無い、そう思うだけで人の神経って緩むから。
九郎さんが昔の話をするときの声はとても暖かい。特に奥州の話をするときは優しく語るような口調。

「九郎さん・・どうしてここに?」

「お前を探しに来た。急にいなくなるからだ。」

ぷん、とすねたように言う。
・・そういえばもうすぐお昼・・。

「すみません・・おなか空いてるんですね。でも、私だって時々は外の空気すいたいですよ。」

「空いてない!!」

言うと共にぐ〜っとなる音がして、九郎さんの顔が真っ赤に染まる。

「ふふ・・知りたいんです。私、泰衡さんのこと。」

何事にも表と裏がある、私はその裏を知りたいんだ。
奥州の昼時の空はとても綺麗・・・・雲ひとつない、秋晴れ。

早く高館に戻らないと・・皆おなか空いてるみたいだしね・・。



後書
あ、珍しくふざけてみました。
でも内容は本当は真剣に書かなきゃいけないような
重いものなんですね★にしても・・
泰衡さんめんどくさ・・やりにくっっって訳でホント少ししか喋ってません・・ぁぁ痛い。

コメント