人は生きるためにはひとつ、信じるものが必要である。
その、信じるものの又の名を、信念とも言うのかもしれない。
ある人は自分を曲げないこと、ある人は自分を隠すこと、すべてを隠して、独りで何もかも背負うこと・・。

だから、なのかもしれないけれども・・・私は、自分が信じる人の信念が知りたい。
信念がダメなら、信じるものでもいい。

だってだって、私には彼が見えない。
信じるものがわからない。・・・・・・・・・・・それを知りたいって思うことはいけないことなのだろうか・・。

「ヒノエ君」

「?」

私が話し掛けた彼は、どうやら考え事をしている最中だったらしく。無言で振り返った。
赤の髪がとても鮮やかに日光を浴びる。

「なに・・考えてるの?」

「何って・・望美のこと。」

「じゃあ・・・なんで、なんで・・・・・・・・眉間に皺寄ってるの?何で気難しい顔してるの?」

私はぎゅーっとヒノエ君の眉間の皺を伸ばすように指で押す。

「もう戦はないよ。策は必要ない。私はーー戦の間にヒノエ君を信じたよ。ヒノエ君はーー私を、信じてる?」

「信じてるに決まっているーーじゃないか。・・・・・・・・のぞみ」

少しだけ慌てているヒノエ君、でも私は本気だよ。
分かっていると思うけど・・・・ね?

上目遣いで私はヒノエ君を見ながら笑った。

「私が、今、考えてること・・・・・・・・・・・・・分かる?」

「それとーーーこれとは・・・・・・・・・・」

「ちがくない!私は不安、ヒノエ君はいっつも仕事してるし、私が置いていかれているみたいで・・・・・・・・・・やだ。」

こんな風に我侭言う自分がすごく情けなくて、大嫌いだけど・・・自分を我慢する私ももっと嫌いで。

私は仕事に、
やきもちを焼く。

「ごめんーーー口に出さないと分からないことも有るんだ。」

そのやさしい言葉に涙が溢れ出して
私は信じてる。彼を信じてる。
けど・・・・・・・・・・

「分かんない。でも不安なの、信じてる。私、信じてるよ・・・・・・・・・・」

子供みたいに泣きじゃくる私、

「見て、望美。」

目の前にはヒノエ君の淦の瞳、とても真直ぐで。
私を見ていたーーー涙を手で拭きながら。

「俺は望美を信じてる。手に入ったものはすべて守ると決めたんだ。言わないことが不安なら、すべて話すから。」


「だから、泣くのをやめてくれるかい。」



そして、私は彼の信じるものを知った。

end

コメント