――綺麗な箱だね
 ―そうでしょ?貝細工で出来ているの。昔、此れを光に当ててきらきらと反射させるのが私大好きだったのよ。
――でもさ・・・此れ・・
 ―ああ、此れにはちゃんとした理由があるのよ。この箱は私のお気に入りでいつも一緒だったから、ある時壊れてしまったの。




「朔〜手を離してくれないかな〜お兄ちゃん出かけなきゃ〜」
頭をかきかき景時は小さな妹を見る。
その小さな可愛い妹は涙目でこっちをじっと見ていて・・
思わず顔が緩む。
「だって・・あにうえ・・」
白い小さな手に大切そうに抱えているのは貝細工の箱。
ついこの間朔に父上があげた箱、鶴の貝細工、塗りの箱。
もらったときからずっといっときも離さない。

暖かな日光に照らされて、箱の鶴はきらきらと輝く。
「壊れちゃったんです〜ちちうえから頂いたものなのに・・・わたし・・」

そしてふぇ、ふぇ・・と今まで我慢していた涙がぽろ、ぽろ。と黒いまんまるの瞳から零れ落ちる。

「うわ〜さ、朔〜泣かないで、ね?お願いだよ〜」

「ぅわ〜ん」

体当たりするように泣き崩れる妹をオロオロしつつけれどしっかりと受け止める兄、景時。
妹に触れるその手はとても優しげに見えた。

顔はかなり困っているようだが・・・(笑)

そして小さな妹の目線に合せて、かがんで優しく諭すように言う。

「朔、壊れたものはもう2度と直らないんだよ。直すとね、前とはどうしても少し変わっちゃうんだ。分かる?」

「・・・・・・・・・うん」

涙をためた瞳でこくん、と妹はうなずく。

「・・だから、直してみるけど。元に戻るかは分からない・・でもいい?」

「ふたがつけば良いです。・・・・・・でも、ちちうえには、秘密ですよ?」

そう言って、小さなかわいらしい指で、し〜っと言う動作をした。
瞳にたまった涙はきらきらと輝いて、そして笑う。
兄に箱を手渡して・・・

景時は思う。
さっき鳴いた鳥が、もう笑っている。
なんて可愛いんだと、景時の顔が綻ぶ。

「あにうえ、おくれてしまいますよ?いってらっしゃい。」

「・・・・・・・行ってきます。」

妹の妙なしっかりさに苦笑しつつ景時は我が家を出る。
手にはキラキラと?る匣を持って。





「ってこんなの持って行けないよ〜。朔、帰ってきたらね〜」





――へぇ、昔は朔もわがままだったんだ。
 ―まぁ幼かったし、仕方がなかったのかしら?
――幼かったのは景時さんも一緒だね、
 ―そうね。

ふふ、くすくす・・と、笑い声が響く。



「朔〜直ったよ〜開けてみてごらん。」

「わ〜ありがとうございます。あにうえ。」

「・・・・・・・・・」

「?どうしたの、朔?」

「あにうえ、ふたが・・逆です。」

「〜っっごめんよ〜朔〜(汗)」



終わり

後書

朔ちゃんと景時幼いときのお話です。
やっぱりぼのぼのいいなぁ・・・・☆
としみじみする司穏ですが、(笑)
これは、朔ちゃん阿弥陀の手慣らしって事で
そんな感じにしましょうか・・。
実はもう10のお題、下書きの段階では7クリアです。
残りは 白 憂 體
ですが・・時間の許す限りやってたらきっとできる!!
と信じております。

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